バーチタールは、白樺の樹皮を乾留することで得られる暗褐色の液体だ。革なめしの防腐剤として何世紀も使われてきたこの原料が、二十世紀初頭にフレグランスの世界に入ってきた。煙、革、焦げた木。これらの匂いを一つの原料で表現できる素材は、他にほとんどない。

乾留という工程

バーチタールは、白樺の樹皮を酸素のない状態で加熱する乾留によって作られる。この工程で、樹皮に含まれるベツリンやその他の有機化合物が分解し、独特のフェノール系化合物が生成される。産地によって成分比率が異なり、ロシア産とスカンジナビア産では煙の質が微妙に違う。Zephyr Ash Meadowでは、フィンランドの小規模生産者から仕入れている。

フレグランスにおける役割

バーチタールはベースノートとして使われることが多いが、少量であればトップノートにも影響を与える。Cendres d'Aoûtでは、トップにバーチタールを配置することで、最初の一吹きに焦げた藁の記憶を呼び起こす。時間が経つにつれてスモーキーさは引き、グレイ・アンバーとパチュリのベースが前面に出てくる。この変化が、夏の終わりの農場の一日を追体験させる。

規制と代替原料

バーチタールはIFRA(国際香料協会)の規制対象原料の一つで、使用濃度に上限がある。規制の理由は、高濃度での皮膚刺激性だ。多くのメゾンは合成代替原料に切り替えているが、合成品はバーチタールの複雑さを完全には再現できない。Zephyr Ash Meadowでは、規制の範囲内で最大限の濃度を使用し、不足する部分をスモーキー・ウッド系の原料で補っている。

保存と扱い方

バーチタールは粘度が高く、低温では固まる傾向がある。使用前に湯煎で温めて流動性を回復させる必要がある。また、強い匂いが他の原料に移りやすいため、保管は密閉容器で他の原料から離して行う。アトリエでは専用の棚を設けており、バーチタールとその他のスモーキー系原料はまとめて管理している。

バーチタールは扱いが難しく、使いすぎると香り全体を支配してしまう。しかし正しく使われたとき、他の原料では作れない「焦げた記憶」を生む。それがこの原料を、Zephyr Ash Meadowのコレクションから外せない理由だ。